Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第36章 パラドックス■
「本気…なの?」
「冗談でそんなことは言わねぇよ。」
「でも…私は…兵士…だから…」
そこまで聞くとリヴァイはズンとルーナに近付き、頭に手を置いた。
驚いたようにリヴァイを見上げる。
しかしその表情は、次の言葉でさらに違うものとなった。
「兵士を辞めろ」
その瞬間、時が止まったようになった。
息すら止まり、まるで自分だけその空間から切り取られたかのような感覚になった。
「お前はもう十分に兵士としてやってきた。だから今更辞めても誰にも責められはしない。」
「だめ…辞められないよ…今までやってきたことが全部無駄になる。」
「は?ならねぇよ、どうしてそうなる」
ルーナは真剣な目付きになり、頭上に置かれているリヴァイの手を掴みおろした。
「…とにかく私は兵士を辞めることはない」
強い意志を宿すような瞳で真っ直ぐと見つめられ、リヴァイの眉間に皺が寄る。
「…まだ決まったわけじゃねぇが、もしもガキができてたら?…堕ろす…ってのか?」
「違う。リヴァイとの子供はいつか欲しいって前にも言ったでしょ。…産んだとしてもすぐに兵士に戻る」
「ならガキはどう育てる?」
ルーナは目を逸らして俯いた。
「そんなの…どうにでもなる。それに…もうこの話はやめよう。まだ何も決まったことじゃない。そんなこと今話し合っててもしょうがない…」
リヴァイは諦めたように肩の力を抜いた。
「…わかった。とにかく…悪かった。お前をそんなふうな抱き方をして。許してくれ。もうしない。」
するとルーナはゆっくりと布団を剥がし、自分の痣だらけの体をまじまじと見た。
その様子に、リヴァイの顔がみるみる歪んでいく。
しかし次の言葉でそれは驚きの表情に変わる。
ルーナが笑いだしたのだ。
目を見開いたままリヴァイが唖然としていると、ルーナは笑みを浮かべたまま言った。
「何言ってるのリヴァイ。許すも何も、お互い様じゃん。私だっていつもあなたに同じことしてきた。あなたの体はいつだって私よりも酷い。」
そしてまた自嘲気味に笑う。
「ルーナ…」
唖然としたまま微かに呟くと、ルーナは眉を下げて切なそうな表情をしてから静かに言った。
「謝るのは、ナシ。リヴァイがいつも言ってることだよ。」