Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第29章 星の降る夜■
俺はもっと近くで聴きたくて、バレないようにゆっくりゆっくり歌のする方へ歩を進めた。
ベンチに腰かけ、空を見上げて歌を口ずさむルーナがいる。
あの時と同じ、いやあの時よりも悲しげな表情をしているように見える。
暗闇だけど俺には分かる。
歌声はあの時と全く同じだ。
俺は目を瞑った。
耳以外の全ての感覚を遮断して、その歌を深くまで聴いていたかった。
深く深呼吸をすれば、昼間のことは頭の隅に追いやられ、脳のほとんどがその心地よい声色に支配される。
突然歌が止まった。
俺はゆっくり目を開けると、ルーナの方を盗み見た。
隣にはルーナにいつも付きまとっているあのクラムとかいうガキが座っている。
まさか、待ち合わせ…していた?
俺は今すぐにでも行って引き剥がしたい気分だったが、なんとか理性でそれを押さえ込み、様子を伺った。
割と近くなので話し声は聞こえる。
身の潜め方や敵の伺い方など、地下街で培ったそれに感謝した。
「綺麗な歌ですね〜!ルーナさん」
「はは…なんだか恥ずかしいな。call of silenceっていうんだけどね、この曲を歌うと必ず私の頭の中はある人のことでいっぱいになるの。」
「え?ある人ですか?」
「あ…うん。ごめん突然意味わからないこと言って!」
「いえいいですよ!もう一度最初から聞かせてください!」