Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第15章 無の世界■
「お前、風呂に入ってけ」
「え?良いのですか?」
「そのままで帰すわけにいかねぇだろ」
そう言って不機嫌そうな顔に戻ったリヴァイはトスっとソファーに腰かけた。
「ふふ、お優しいんですね。じゃあ一緒に入りましょうよ」
リヴァイは一瞬躊躇ったが、どっちみち自分も入らなくてはならないのだし、ここまで来たらもうどうにでもなれといった思いで頷いた。
「洗って差し上げます」
そう言ってサラは恥じらうことも無くリヴァイの身体を隅々までマッサージをしながら泡立てていった。
手先が器用で力加減も非常にうまく、リヴァイはこんなのはいつぶりだと思いながら天井を見上げて目をつぶった。
その様子を見ながら嬉しそうにサラが言う。
「ふふ...気持ちいいですか?」
「あぁ...悪くない...」
一緒に浴槽に浸かりながらサラはいろんな話をしてきた。
家族のことや、数年前の壁破壊の一件で想いを寄せていた人を亡くしたことなど。
その人とは喧嘩別れをしてしまっていたらしい。それが一生の後悔なのだと。
リヴァイはほとんど黙って聞いていた。
最後にサラは色素の薄い美しい透き通った瞳を向けてこう言った。
「リヴァイ兵長は今、大切な人はいますか?」
「・・・」
「何があっても絶対に死んでほしくない人です。」
リヴァイの頭の中に真っ先に浮かんだのはやはりたった1人の女の顔だった。
しかし理性がそれをすぐに振り払った。
「別に...いねぇな」
サラはそんなリヴァイに優しく微笑んで言った。
「もしもそんな人がいたら、常にそばにいなくちゃですよね。私がした後悔をリヴァイ兵長にはしてほしくありませんから」
リヴァイは息を飲んだ。
「後悔しない選択をしてください。絶対に。」
なんと強い女だろうか。
自分のことを好いているくせに本当に想う女の元へ行けと言っているのか?
これじゃどっちが歳上なのか分からない。
傷ついた心を癒すためか怒りを沈めるためか、行き場のない感情を想い入れのない女を抱いてぶつけた自分の幼稚さに嫌気がさす。
しかしリヴァイは今日サラを抱いたことにより、
人で傷ついた心はやはり人でしか癒せないのだと知った。