Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第14章 画家
「1週間だけ兵舎に飾らせてもらう予定でしたが、できれば買い取らせていただきたい。言い値で構いませんので」
エルヴィンが真剣な顔で言うと、ダリは笑いながら返した。
「この絵は永遠にここにあるのが相応しい。代金も適当で良い。なにしろ既に報酬はたんまりもらったわい。」
ダリはこの兵舎で見てきたものに思いを馳せた。
死にゆく者たちの美しい姿、負傷しても最期まで戦おうとする美しい姿、
涙を流す者たちの美しい姿、常に上を目指し訓練する美しい姿、
人類に心臓を捧げることを誓い敬礼をする美しい姿、
何があっても歩みを止めず、決して諦めることのない調査兵団という美しい者たちにダリはいろいろなことを気付かされていく実感があった。
美しすぎる男女の裸体を描くことができただけではない。
死ぬまで知ることがなかったであろう兵団の内側の世界を知ることができた。
それは紛れもなく、人類の希望と呼ぶにふさわしい素晴らしい組織だった。
「団長さん、わしはあんたたちを応援してるよ。心から。」
そう言ってダリは手を差し伸べた。
エルヴィンはその手を取り、しっかりと固い握手を交わした。
エルヴィンはダリに多めの代金を握らせようとしたのだが、彼は頑なにそれを受け取らなかった。
「これはこの兵団で人類のために役立ててくれ。わしからのお願いだ。わしも少しでも、君たちと人類の手助けができたと思いたい。どうか頼む。」
その真剣な眼差しにルーナも心を打たれた。
ダリは最後、ルーナとリヴァイに両手を差し出した。
ルーナは左手をリヴァイは右手を握り握手を交わしながら、ダリは言った。
「あんたたちは随分似た雰囲気を持っている。恋人というよりもまるで双子のようにわしには見える。またいつか2人の絵を描かせてくれ」
そう言い残すと、振り返らずに出ていった。
後日、額縁に丁寧に入れられたその絵は兵舎内に飾られた。
誰もが感激し、涙を流す者が多くいた。
もういない者が描かれていたり、描かれるはずだった者がいなかったり、
現実の残酷さも物語っていたが、大きく描かれた美しい自由の翼が、今までの全ての調査兵たちを描いているということが誰の目にも明らかだった。
その絵の前で毎日誰もが敬礼をし、日々の自分を鼓舞していく調査兵団の象徴となった。