Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第58章 赤い鮮血
話してなかったけど、私には幼い息子がいた…
妻は…マーレ人だった…
私は腕章を外し、エルディア人であることを隠したまま妻と暮らし、子を作った。
私は若く、愚かだった…
クサヴァーの眼鏡の奥が光り出す。
しかし…いつまでも隠し通せるわけもなく、
私がエルディア人だと知った妻は…
自分と息子の喉を切り裂いて死んだ…
私が戦士になった理由は、贅沢な自殺の方法に飛びついた格好に過ぎない。
だがこの13年間は、君と出会い、キャッチボールをした。
楽しかった…
亡き息子を君に求め、巨人の力で自分の罪から逃れようとした。
私なんてこの世に生まれて来なければ、
どんなに良かっただろう…
クサヴァーさん、
俺が獣の巨人を継承する!
始祖奪還計画を成功させ、始祖の巨人をマーレから奪ったら、世界を救ってみせるよ。
世界の人々を巨人の恐怖から解放し、エルディア人を苦しみから解放する!
…ジークっ………
「唯一の…救い……エルディアの…安楽死…」
「あ?なんつった?安楽死だと?」
あれから結構道を進んだらしい。
いつの間にか当たりは薄暗く曇りだし、光ひとつなかった。
大粒の雨が降り注いでいる。
「お前はこれから臭ぇ巨人の口の中で、自分の体が咀嚼される音を聞きながら死ぬわけだが…お前にしちゃあ随分楽な死に方だろ?お前が奪った仲間たちの命に比べれば。」
リヴァイはフードをつまみながらジークの前へと降り立った。
「…奪って、ないよ…俺は救ってやったんだ…そいつらから産まれてくる子供の命を…この…残酷な世界から……そうだろ…」
俺は間違ってない。
最期まで約束を守る。
リヴァイは眉間に深くシワを刻みながら冷徹な眼光で剣を引き抜いた。
「…また足が伸びてきたみてぇだなぁ…」
そろそろ我慢の限界が近い。
…くそ…
俺は…いつまでこいつを…
「「クサヴァーさん!!見ててくれよ!!!」」
「っ!?」
叫び声と共に突然ジークが身を仰け反らせた。
ピンッ!!!
ドッカーン!!!!!!!
爆風と共に赤い鮮血が飛び散り、全てが一瞬で砕け散る。
馬も荷馬車も砕け散り、2人の体も凄い勢いで吹っ飛んで行った。
リヴァイが意識を失う直前に脳裏に浮かんだのはやっぱり1人の顔だった。