Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第57章 カード
「どうして任務中に酒がいる」
荷馬車に大量に積まれる酒瓶を睨みつけるリヴァイ。
「兵長!これは憲兵の連中しか飲めなかったマーレ産の希少なワインなんですよ!」
「調査兵の若いのが頑張って仕入れてくれたのに!ここに置いていくって言うんですか?!」
「少しくらい楽しみがないと!ずっとあそこに滞在するわけですし!」
「・・・紅茶があるだろ」
「「へいちょおおお!!!!」」
バリスも含め、必死に懇願するような目を部下たちに向けられればリヴァイはもう何も言えなくなる。
しかもバリスと以前酒を飲みかわした時、彼はワインが一番好きだとも言っていた。
大事な任務中に酔っ払われては困るが、そうならない程度になら少しくらいこいつらを甘やかせてもいいか…
それにどのくらいの期間あそこに滞在しなくちゃならないかもわからない…
「いいじゃん。リヴァイ。ここに置いてかれても困るし。私は飲めないよ」
荷造りを手伝ってくれていたルーナもいつの間にか会話に加わっている。
「はぁ…めんどくせぇな。いいだろう。持っていけ」
部下たちはたちまち目を輝かせて準備を再開していった。
「リヴァイ…」
別れ際、ルーナはもう寂しそうな顔は一切見せなかった。
真剣な瞳で真っ直ぐとリヴァイを見つめ、手を取った。
そして、薬指の指輪にキスをする。
リヴァイも同じようにルーナの指輪に口付けした。
愛してる。信じてる。
必ずまた会う。
他にも数え切れない程のいろいろな思いを込めてする、2人だけのいつもの儀式。
部下たちの見ている前だが、ギュッと抱擁をかわした。
互いの同じ石鹸の香りが1つになる。
しばらくして、どちらともなく体を離す。
ルーナは柔らかい笑顔でリヴァイを見つめた後、今度は後ろに立っていたバリスへ抱きついた。
「えっ、ルーナさ…」
驚いてリヴァイに視線を流すと、リヴァイは何食わぬ顔でこちらを見ている。
バリスはルーナの気持ちに応えるように背中に手を回した。
「バリス…必ず戻ってきてね。それと…どうかリヴァイをよろしくね…」
耳元で小さく囁かれ、バリスは頷き腕の力を強くする。
リヴァイとルーナの間にはもう言葉はいらなかった。
互いの慈しみを込めた視線だけ数秒交えた後、そのまま別れた。