第1章 憧れ
「調査兵団だ!ケイトも見に行こうぜっ」
「えっ、わわっ」
「…エレン、調査兵団なんて認めないから」
「ちょっとエレン!そんなにケイトの服引っ張ったらのびちゃうよ!?もう少し優しく……」
「そ、そうだそうだ!裾が伸びるじゃん!」
「…あ、わり…」
太陽がようやく真上に位置し、ここ、シガンシナ区へとありったけの光を降り注ぐ。
そんな射光を浴びながら、いつもの四人は憧れである調査兵団の帰還を観ようと足を走らせた。
街の中心部につくと、調査兵団が帰還する際に通る道は壁の外に行った人間を一目見ようとたくさんの人でごったがえしていた。
そんな中、エレンが強く引っ張ったせいで少しよれっとした裾を見つめながらケイトはしょんぼりした表情で言葉を発した。
「…いっちょうらだったのに…………」
唇を尖らせてエレンを見れば視線に気がつきこちらをその大きな瞳で覗いてくる。その目はいつも希望や夢に溢れていてまっすぐ見つめ返されるとケイトはいつもドキリとしてしまう。
「そ、そんなに伸びたのかよ……」
しかし今はいつもの光が宿ってはいなく、ケイトの腕の裾をチラリと見ては長い睫毛を伏せ、困惑の色を瞳に浮かばせた。
その様子は、ケイトが悪いことをしたかのような錯覚を起こらせる程のものだった。それに少しの罪悪感を何故か覚えたケイトは、ものすごく反省しているエレンの服の裾を伸びない程度に引っ張る。
エレンの伏せていた睫毛が上がり、ケイトをキョトンとした顔で見る。
ケイトはにんまりと笑って、
「おかえしっ!」
と笑顔で言った。
その様子にエレンはイタズラっぽく笑い返した。
「このやろー」
「えへへ」
二人が道に溢れんばかりに並んでいた大人達の影でじゃれあっていると、その場にアルミンが息を切らしてやって来た。
「…はぁ、二人ともっ!よく見える場所があったよっ…ミカサがいるからっ……はぁ、しんどいや……」
「本当かっ!?サンキューアルミンっ!!」
アルミン体力なさすぎ………と思う暇などなく、ケイトはエレンに行こうぜっと、今度は裾ではなく手をひいて、走った。