第8章 酒の呼吸
翌朝のこと…
『ふぅ~…あ〜…』
桜雪は鬼化しそうな恐怖と胸を掴まれるような痛みと割れるような頭痛に耐えていた。
この2年間…定期的に現れる。
ふと、実弥の事が頭に浮かんだ時にこうなる。
ひたすら、呼吸をして自分を落ち着かせる。
『桜雪さん…大丈夫ですか?』
その様子を玄弥が心配そうに見ている。
『大丈夫…大丈夫だから…今は…近づくな…喰ってしまいそうになる…』
『あの…桜雪さんが辛そうにしてるのは…もうっ!!見たくないですっ!!兄貴なら…不死川実弥という人なら…今の桜雪さんを治せますかっ!?』
玄弥は叫ぶように言った…
『玄弥…アイツの名を出すなよ…今度…出したら…その瞬間…お前をぶった斬ってやる…』
桜雪は苦しみながらも玄弥を睨みつけて言った。
『お〜…またか〜?』
そこに登場した宇髄は桜雪の傍にいくと、桜雪を抱きしめた。
『天元…あたし…人でいたい…鬼になるくらいなら死ぬ…』
『落ち着け…ならせねぇよ…このままで居てやるから深呼吸しておけ…』
宇髄は桜雪の背中を撫でている。
『あの…宇髄さんと桜雪さんって…』
玄弥はそこまで言いかけてやめたが宇髄は言いたいことが分かったようだ。
『別にお前が思ってるような関係じゃねえよ…コイツとは…腐れ縁でな…人嫌いで鬼嫌いなコイツがアイツ以外では俺にだけ心を開いてるってだけの話しだ。まぁ、ド派手に酔ったコイツと夜を共に過ごした時もあるけどな?』
ニヤッと宇髄は微笑んだ。