第15章 無限列車
実弥は桜雪の遺品の一つ一つを畳の上に広げた。
サラシ、隊服、背中に悪鬼滅殺と書かれた羽織、大きな瓢箪、そして…見覚えのある赤い紐が括り付けられている手のひらサイズの瓢箪だが中身は入っていない。
『肌身離さず持ってくれてたんだなァ…』
実弥の頭の中にはこの瓢箪を渡した時の桜雪の顔を真っ赤にしながらありがとう…と言った顔が浮かんだ。
こんな事なら…プロポーズでもしておけば良かった…
祝言を早めにあげておけば良かった…
実弥は1人で桜雪の遺品を見ながら桜雪の生前を思い出しながら泣いた。
『不死川…あの日以来だな…お前の泣き顔を見るのは…』
『宇髄…勝手に入ってくんなァ…』
『そんな事…言うなよ…桜雪の肉親は御館様くらいしか居ねぇ…だから、俺に渡しといた方がいいだろって事で桜雪の遺書を渡された。』
宇髄は縁側に座ると桜雪の遺書を読んだ。
途中で宇髄さえも涙声になっていた。
『アイツらしいなァ…』
『そうだな…俺は帰る…嫁たちまで大泣きしてな…特に須磨が泣き叫んでんだ。慰めに行かねぇとな…』
宇髄はそう言って風屋敷から出た。