第8章 7.5
『お待たせ致しました。』
突然、出ていった カノンちゃんをベッドの上でゴロゴロしながら待っていたらやっと戻ってきた。
手にはお盆。上にはお菓子とマグカップ...が1つ?
『どうぞ』
「どうも」
『お菓子もありますからね』
ベッドから降りて部屋の真ん中にある小さなテーブルの上には俺がさっき持ってきたマグカップが置かれた。中には俺好みのココア。
お菓子の入ったお皿を置くと カノンちゃんはテーブルを挟んで俺の向かいに座った。
『五条さん。ありがとうございました。』
「...なにが?」
『この前バイトで話してた事覚えててくれたんですね』
「バイトで話してたこと...」
なんの事だっけ...
思い返しても カノンちゃんと話したのはお客さんに対する態度で怒られた事しか思い出せない。
カノンちゃんは嬉しそうに微笑んでいる。
でも、カノンちゃんの手には俺が持ってきた対のマグカップでは無い...
「んーっと、 カノンちゃん。俺のもう1個のマグカップは?」
『ん?』
「ん?」
『あれ?そーゆう事じゃないんですか?』
「どーゆう事?」
慌ててる カノンちゃんに理解できない俺。
『ごめんなさい。私てっきり、この前のバイトの時に五条さんが父とお気に入りのマグカップ壊れちゃった話を覚えててくれてプレゼントで買ってきてくれたのかと思って...』
「は、はぁ...」
そんな話覚えてない。忘れてた。
でも思い出した。
カノンちゃんが裏の厨房で作業をしている時におっちゃんが「お気に入りのマグカップ落として割っちゃったんだよ〜」って話しかけて、それに対して「ふーん」と返した事も今の今まで忘れてた。
「それじゃあ...カップは?」
『お父さん...喜んでました...』
「...そ、そう」
初めてのお揃いは失敗した。
後日、おっちゃんにお礼を言われ、傑達に経緯がバレると傑と硝子は盛大に噴き出していた。汚っ