第5章 5【name#4設定推進】
何を期待してたんだろう。
分かってたのに
彼が素直に私の事を好きなんて言うわけない。
分かっていた事なのに少しだけ胸の奥が重たく感じるのはなんでだろう。
息苦しく感じるのはなんでだろう。
静かになった家の中で重い体を引きずりながら布団へ倒れ込む。
大きくゆっくりと深呼吸すれば五条さんの優しい香りがした。
呼吸が落ち着いたと思って、目を開けば涙が流れるように溢れた。
勘違いしていた。
あの人の気まぐれを優しさと勘違いして、自分だけ特別なんだと思い込んでしまっていたんだ。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
好き。
そう思ったらまた胸の奥が苦しくなった。
こんなに重たくて苦しいものなんだ好きって気持ちは。
もう嫌だ。
こんなに重たいならこんなに辛いならこんな気持ち要らない。
気持ち悪い。
きっと一時の迷いだ。
体を布団の中におさめて、ギュッと丸くなる。
自分の気持ちを抑え込む。
勘違い、違う、気持ち悪い。
否定して、否定して、自分には似合わないと押さえ付けて。
溢れる想いに蓋をして眠った。