第4章 4
「ただいまぁー」
コッソリと寮の扉を開けて、自分の部屋まで忍び足で進む。
門限なんてあってないようなもの。これは本当だ。
ただ、任務をしている時としてない時では違う。
俺は今日、任務が無かったので門限を守らなきゃいけないのだがまぁ守ってないし。夜蛾先生にバレたら締められるのは明確なのでコッソリと部屋へ戻っているのだ。
無事に自分の部屋の前まで着いて、鍵を開けてると視線を感じた。
視線感じる先を見ると、隣の傑の部屋から目玉が4つ。こちらを見ていた。
「...こわっ」
「おかえり、悟。」
「おせぇぞ、クズ。」
目玉の正体は傑と硝子。
俺が遅かったから心配してたのかって言ったらそうじゃない。
2人の目当ては俺に頼んだお使いの品々だ。
自分の部屋には戻らず傑の部屋に行くと2人に袋をそれぞれ渡した。
「帰るの遅いじゃないか、盛り上がったのか?」
「盛り上がったけど、邪魔が入った。」
「お、これめっちゃイイじゃん。やっぱネットより実物のが良いね」
傑はこっちの話を色々と聞き出そうとしてるのに対して硝子はやはり硝子、我が道を行くばりに俺の話なんて聞かずに袋を漁ってる。
「なに?ヤろうしたの?意外にチョロいんだね、武笠さん」
「は?違ぇよ。ヤるまでいかなかったけどキスはできそうだったよ」
「おい、可愛い女の子の前で下ネタかますなよ。恥ずかしいだろ」
「え?硝子パイセン女の子だったんすか?」
「おい、悟。俺こーゆう色の着ないよ」
「まぁでもさ」硝子のゲンコツを1発貰った俺を気遣うわけでもなくそのまま話し続ける傑。マジで2人とも酷すぎる。
「悟は楽しかったのか?」
傑が聞いてきた言葉。
楽しかった...喧嘩したり予定外の事が起きたり、たったの半日の僅かな時間。たった、僅かな時間だが俺はあの時、彼女の下手くそな笑顔を見て彼女の作った飯を食った時にこの時間がまだ続けば良いのにと思った。
だから初めて「またね」と声を掛けた。
呪術師同士でも滅多に言わない「またね」。
彼女にまた会いたい。
「楽しかった」
そう言う俺を傑と硝子は「良かったね」と言ってくれた。