第3章 3
『それじゃあおやすみなさい』
「足りない」
ちょっと予想外だったが目的は果たせたので電話を切ろうとしたら突然の「足りない」に切るタイミングを奪われた。
『え?』
「足りない」
『お、おめでとうございます。』
「ありがとう、足りない」
えーーっと、これはなんて言えば正解なんだろう。
五条さんの言ってくる事に対しての答えが分からず黙っていると先程まで「足りない」しか言ってこなかった五条さんがやっと答えを言った。
「デートしよう」
物を要求されると思っていたらまさかのデートの誘いで、予想外だったので黙ってしまった。
『お出掛けですか?』
「そう、デート」
わざわざ言い換えてまで「デート」を強調してくる彼に少し警戒したが、とりあえず友達も誘えばいいかと思い承諾した。
『いいですよ』
「え!?イイの!?」
私が承諾すれば彼は意外だったのか珍しく大きな声を出した。
『誰か誘いますか?』
「は?なんで?」
提案すれば途端に声のトーンがまた下がった。
感情の起伏が激しい人だな。
「あのさー、カノンちゃんデートって知ってる?デェトだよ?なんで友達誘うんだよ。逢い引きですよ?あ、い、び、き!グーグル先生で調べてもらっていいっすか?」
『逢い引き!?』
五条さんの人を小馬鹿にする言い方に少しイラッとしたが逢い引きって言葉にビックリして躊躇していると
「あ、今更イヤとかナシはナシは無しね。返品不可でーす」
『うっ、』
「いやーめっちゃ楽しみだわーお洒落しなきゃね♡」
『えっと』
「カノンちゃんいつがいい?どっか行きたいとこある〜?」
『...』
駄目だ!ここまで来たらもう引き下がれない。
ここで『やっぱりやめます。』なんて言ったら「ビビり」って絶対に言われるだろうし、面倒臭いこと間違いない。
なら1日出掛けるだけだろ?腹括って我慢するしかない!!
「あ!」
『ん?』
「...泊まりですか?」
『日帰りです!!』
「あはは、残念〜」
『ったく、日にちは27日でいいですか?』
「27?んっとねー、あ!イイよ!大丈夫!」
『じゃあ、27日。駅前集合で。』
「時間は午後からで良い?14時とか」
『お願いします。』
今日一日で色々な事があって疲れていて、このままダラダラ話したくなく早く電話を切ろうと予定をすぐ決めた。