第9章 8※8巻内容有り
「暫く会えない」
今まで一度もそんな事、言われた事なかった。
いつも気まぐれ。
毎日来れば途端に4日後、1週間後、2週間後...野良猫みたいに気まぐれに来て何事も無かったかのように過ごしてきたくせに、ここに来て突然「暫く会えない」...慣れない言葉に少しだけ心が震えた。
『どこか行くんですか?』
「んー...まぁそんな感じ。傑と2人で」
『旅行?』
「そ、お土産買ってこれたら買ってくるね」
『いいですよ。なんかよく分かんない部族のお守りとか増えても困るんで』
「イイじゃん。ここまできたらコレクションしよう」
『私の部屋でコレクションしないで』
歯切れの悪い彼の返事を気付かないフリをしていつも通り振る舞う。
彼はどこに何をしに行っているのか...行く先々のお土産を私の部屋に1個置いていく。
麻縄で作られた人形や木 派手なカラーリングをされたら木彫りの動物...どれもこれも可愛くないのに棚に飾っていくからそこの部分だけ妙に浮いている。片付けようかと思ったが人形かもしくは五条さんに呪われそうで結局、片付けられずそのままだ。
『でも、ちょうど良かったです。』
「なにが?」
『私も文化祭の準備で忙しいので』
「文化祭!いつ?」
『聞いてどうするんですか』
「傑と行く」
『来ないで』
「なんでー!」と五条さんは文句を言っているが五条さんただ1人でも目立つのに夏油さんと2人で来るなんて!!...もう!!...ヤバい!!
絶対に来ないで欲しい。
「文化祭なにやるの?」
『...劇』
「へぇー!なんの劇!?」
『シンデレラ』
「ほぉー!学生っぽいぽい!!因みにカノンちゃんの役は?」
『...無いですよ。裏方です。』
「へ?出ないの?」
『みんながみんな出るわけじゃないんです。私は裏方希望で通ったんです。』
「ふーん、そっかぁ」
つまんなそうにする五条さんを後目に私はドキドキしている。
私は嘘をついた。
裏方じゃない、本当は表で役もちゃんと貰っている。
魔法使いの役だ。