第4章 金魚の恋
松風屋という遊郭の前までくると、宇髄が足を止めた。
煉獄、ここなんかどうだ?
少し前に入った娘が評判らしいぞ
よもや宇髄…俺たちは呑みにきただけだろう?
まぁそう言うなって!
足を止めたまま、宇髄と杏寿郎はそのようなやり取りを繰り返していた。
すると、空からヒラヒラと花弁のように白い雪が降ってきた。
道理で、冷え込んでいる訳だ。
自然と雪を眺める為に顔を上に向けると、目の前の店の上の階、窓辺で外を眺めている女の姿が目に映った。暗いのでよくは見えないが、何故だか目が離せず、杏寿郎はそちらを見つめていた。
先日耳にした噂のせいだろうか、髪を華やかに結い、着物をゆったりと艶やかに纏うその女が、であるかのように感じてしまう。
その女は、少しすると障子を閉めてしまった。
杏寿郎は後ろ髪引かれる思いだったが、
雪も強くなり始めた為、宇髄と共にこの日は帰路についた。
ー…
翌日、杏寿郎は朝から街へ向かっていた。
昨夜の事が頭から離れてくれない。
に似た遊女を見たという男の話を聞きに、直接その男を訪ねる事にした。
ー…朝早くからすまない!
先日の…この娘に似た者を見たのは何処だか教えてもらいたいのだが、いいだろうか?
男の家で杏寿郎はの写真を手渡しながら尋ねた。
男は写真を手に、改めて確認すると口を開いた。
うむ…改めて見ると、やはり見間違いではないようだ…。
お前さん、この娘の婚約者だったんだろう…?
男は言いにくそうにしながらも答えた。
この娘は、東の遊郭街にある松風屋で働いている。
店の者によると、名家の娘だったが親の借金の為に売られてきたという事…らしい…。
……そうか。ありがとう。
杏寿郎は短く礼を言うとその男の家を後にした。
ー…