第3章 火をつけたのは…
が着替えている間に、
煉獄は自身が蹴り飛ばした戸を直していた。
作業しながらも、先程の光景が脳裏をよぎる。
宇髄に組み敷かれ、泣きながら止めるよう懇願する。
怒りを覚えたのは当然のことだが、その時に目にした彼女の白い肌が忘れられない。あのまま抱き合っていれば、己も同じような事を彼女にしてしまうのではないかー…そう思い、なんとか理性を保ち彼女から離れたのだ。
戸を付け直し、煉獄は店内の椅子に腰をかけた。
ふと、テーブルに視線を向けるとテーブルに水滴のようなものが落ちていた。指ですくいとったソレは先程の行為でから溢れた蜜だった。甘い匂いが煉獄の鼻を掠める。
同時に身体がカッと熱くなる。彼女にあのような行為をした宇髄を今からでも殴り飛ばしたいという衝動に駆られる。
煉獄は密かにの事を想っていた。
しかし、鬼を相手に日々過ごす自分に色恋などと言っている時間はない。
自身の責務を全うする事を信条に生きてきた煉獄にとって、その恋心に蓋をする事は造作もない事だった。ただ、彼女が幸せに過ごしてくれてればいいと、そう思っていた。
しかし、宇髄との行為を目の当たりにし、蓋をしていたその想いが溢れ出してくるかのようだった。
自分以外の者に身体を開く彼女を見たくはない。
彼女の乱れる姿は自分だけのものにしたい。
独りよがりでしかないと蓋をした気持ち。
しかし、一度溢れた気持ちは止められない。
明日をも知れぬ身である事は百も承知だが、
命ある限り、彼女と共に生きたいと…思ってしまった。
が気付くと傷つくだろうと
テーブルをさっと拭き煉獄は椅子に腰掛けて待ち続けた。
しかし、はなかなか戻ってこない。
不審に想い奥の間の近くへ行き声を掛けようとすると、
部屋からガリガリと身体を引っ掻くような音がしてきた。