第3章 リナリア *
「......!!伏黒?!」
『..............めぐ、み..っ......』
桃花の大きな眼から一粒の涙が溢れ落ちたのを見て自分の中で何かがプツリと切れた。
「.......お前等、そいつに手ぇ出すって事はそれなりの覚悟は出来てるんだろ-な?」
「全員、ぶっ殺してやる!!!!!」
駆け出して桃花の目の前に立っていた男の胸ぐらを掴んで固く握りしめた拳を振り上げる。
『....っ!恵っ!駄目っ!!!』
桃花の声に咄嗟に動きを止めてしまい、代わりに相手のこぶしが俺の顔をを撃った。
『あっ...!恵、ごめ...』
「桃花!!」
慌てて謝る桃花をつい睨み付ける。
「何でもこの子の言いなりだなんて、よっぽどお熱だな!」
「....殺す。」
鼻で笑われ再び拳が振り上げられる。
同時に、蹴り破られた扉の方から声が聞こえる。
「こら!!お前達!!此処で何してる!!」
浦見東の教員であろう人物が大声を上げて入って来た。
「やべ!先公だ!逃げるぞ!」
数名いた男子生徒はあっと言う間に散って行く。
教員一人に対してこの人数だから、手に負えないようだ。
桃花に自分が着ていた上着を羽織らせて腕を引いてそれ等に紛れて俺達も外へと急いだ。
学校が見えなくなるまでしばらく走り、一先ず人気のない公園へ入り足を止める。
『.......恵.....ごめんなさ「何で着いて行った!!」
背中に掛ける声を遮って言う。
思っていた以上に大きな声が出て顔は見えないけれど桃花がビクリとしたのが伝わってきた。
「それだけ声掛けられてると誰か気になる奴でもいた?」
こんな嫌味を言いたいわけではないのに何故か苛立ちが抑えられない。
『.....ちが...う...恵が...怪我したから迎えに来て欲しいって..言われて..信じちゃって...ごめんな、さい....』
声が震えてる。