第10章 オダマキ
side 真人
この間は凄く楽しかったなぁ。
一級術師と戦えて、また新たな発見があったし、経験が積めた。
何より楽しかったのはおひめさまと戯れられたこと。
きれいなおひめさまを汚していくのは堪らなく楽しくて、ゾクゾクと身体が震える程だった。
また会いたいなぁ。
おひめさまは今日は来るかな?
あの七三術師は生きてるかな?
桜里高校の屋上、夏油とふたり、これから始める計画の準備に取り掛かる。
「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え。」
俺の下ろした“帳”が桜里高校を暗闇へと包んでいく。
「おー、できたできた。」
帳を下ろしたのは初めてだけど上出来かな。
「悪いね真人。私の残穢を残すわけにはいかないから。“帳”の効果は?」
「・内からは出られない
・外からは入れる
あくまで呪力の弱い人間はだけど。」
「住宅地での事前告知のない“帳”。すぐに“窓”が通報するだろう。君の考えている絵図が描けるといいね。」
「大丈夫じゃないかな。順平が宿儺の器を引き当てた時点で流れはできてるんだ。2人をぶつけて虎杖悠仁に宿儺優位の“縛り”を科す。」
「漏瑚も君くらい冷静だと助かるんだけどな。」
「アレはアレでカワイイじゃない。それより良かったの?あの指、貴重な呪物なんだろ?」
「いいんだ。少年院の指はすぐに虎杖悠仁が取り込んでしまったからね。吉野順平の家に仕掛けた方は高専に回収させたい。」
「悪巧み?」
夏油はどんな楽しいことを考えているんだろ。
「まぁね。それじゃあ私はお暇させてもらうよ。」
「夏油も見てけばいいのに。きっと楽しいよ。愚かな子供が死ぬ所はさ。」
歩いて行く夏油の背中にもう一度声を掛けた。
「夏油。」
「ん?」
「呪いでも本当にきれいなモノはきれいだと感じるんだね。ほんの少しだけ人間の気持ちが分かったよ。」
「.....。」
「どうして皆、そんなにおひめさまのことを欲しがるのか...分かった気がするんだ。」
またあの時のことを思い出して身体がゾクゾクと震えた。
「人間の汚い欲ってのは最高の呪いになるね。」
「ふふ...あまり夢中にならないようにね。」
「分かってる。」
分かってる。
俺はもう既にキミに夢中なんだ。
「会いたいなぁ。」