第7章 千日紅 *
『...でもっ...!1年生が3人呼ばれているのに、私だけ呼ばれていないっておかしいじゃないですか!...きっと何かの間違いです!...よね?伊地知さん?」
伊地知さんの両手を掴んで小首を傾げる桃花に伊地知さんの顔は緩み切っている。
緊張感...。
そして天然たらし...。
「.....しかしながら.....桃花さんに何かありますと...五条さんの居ない間に万が一傷が付いたともなれば.....私.....もうまじビンタじゃ済まないかもしれません...クビになるかも.....」
コホン、とひとつ咳払いをして話し始めたと思うと、言葉が進むにつれて段々と青ざめていく伊地知さん。
『.....皆んなのことが心配なんです...お願いっ...伊地知さん...?』
更に握った手をぎゅっと強めて上目遣いでお願いする桃花。
「......................................分かりました.........。ただし、先程説明したことは、きちんと守って下さいね?」
『...!ありがとうございます!伊地知さん!』
にこりと微笑むとまた伊地知さんの顔はゆるゆる。
分かります。分かりますよ、伊地知さん。
「あの、あの!!」
そんなやり取りをしていれば背後から女性の声が聞こえてくる。
「正は...息子は大丈夫なんでしょうか?!」
その声に虎杖と桃花が複雑そうな表情を見せる。
「(面会に来ていた保護者です。)何者かによって施設内に毒物が撒かれた可能性があります。現時点でこれ以上のことは申し上げられません。」
虎杖の前にスッと入りその保護者へそれらしい説明をする伊地知さん。
「そんな...」
ハンカチで顔を押さえて涙を流す姿を見て桃花まで泣きそうな表情になっている。
本当...そういうとこ。
「伏黒、釘崎、桃花...助けるぞ。」
「当然。」
即答する釘崎に対して俺は無言で答える。
「..........。」
お前も...そういうとこ...。
「“帳”を下ろします。お気をつけて。」
伊地知さんが左手を顔のすぐそこに持ってきて薬指と小指だけを折り曲げて形を作りながら言う。