第2章 桜
「よし!それじゃあおばちゃんのところ、行こうか」
パンと手を叩いて彼は言った。
「僕と君のおばちゃん、多分お友達なんだ」
『....え....』
(この人と私のおばちゃんが友達..?)
繋がりも共通点も全く見出せない。
「さ!そうと決まれば身支度をして。行くあて、無いんでしょ?
それともここで独りで居たいの?」
未だに座り込んだまま動けずにいる私にそう問い掛けると、あぁ!と何かに気が付いたようにまた話し始めた。
「そうか!そうだよね!知らない人には着いて行ってはいけません!て教えられてるよね!」
「僕は五条悟、呪術高専ってところで先生をしてる。君の名前は?」
(呪術?!先生?!)
先生というイメージとは程遠く見える彼からの質問に答える。
『桜木..桃花..です..』
「桃花ね!はい!これで僕と桃花は知らない人ではありませ〜ん!」
胸の辺りで両手を広げて戯けて言う。
確かに彼の言う通り行くあてなどない。
私はまだ子供で大人の力を借りなければまだまだ生きて行く事など出来はしない。
この人に着いて行って例え殺されても一度手放そうとした命なのだから惜しくはないだろう。
『行きます、一緒に..おばちゃんのところ。』
彼は口角を上げ「そうこなくちゃ」と一言。
特別気に入っていた本を数冊と最低限の衣類をまとめランドセルへと押し込む。
「え、それだけ?」
と彼は驚いた様子だったがこの部屋から持ち出したいと思える物などほとんど無かった。
こうして産まれ育った小さな、小さな部屋を五条さんと共に広い広い世界へと出る事になった。