第1章 壱〜出逢イ〜
女「さてさて、これからこれに手を加えなきゃならないんだ。なるべく急ぐけれど3日はかかるよ、その前に床屋の主人のとこに行って髪をそろえてもらいなさいな」
矢継ぎ早に言い準備を始める女主人
紺炉「こんな時間にすまねぇ」
女「なぁに言ってんのさ、別に構わないよ。祭りが始まってしまえば呉服屋の仕事なんてあまりないもんさ」
紅丸「床屋のジジイは起きてんのか?」
女「ま、あの主人は騒がしいのが苦手だからね。その子供達や弟子たちも残されてるだろう。さ!これから仕事をするんだ、行った行った!」
女主人に礼を言い少女を連れて床屋に向かう2人
辺りは祭り1色ではあったが
最後の花火まではまだ時間があるようだった
紺炉「この着物は床屋で着付けてもらうといい」
少女「...」
紺炉「嬢ちゃん?」
少女「!...?」
紅丸「......ちょっと待ってろ」
紅丸はなにかに気づき走って行き
戻ってきた紅丸の手には金平糖があった
少女「!!...ゥー!!」
途端に幸せそうな顔を見せる少女
紺炉「金平糖気に入ったか?」
少女「!!!」
首を縦に振る少女
紅丸「フッ...」
少しではあるが微笑む紅丸
傍から見たらとても幸せな光景だ
そんなやり取りを続け床屋に着いた頃には
すっかり打ち解けて少女は2人を信頼していた
紺炉「すまねぇ、主人はいるかー?」
主「...話は聞いている。だが儂はどこの誰かもわからん娘に触れる気にはならん、娘にやらせる。文句はないな」
有無を言わさぬ圧で言い
そそくさと奥に引っ込んでしまった
紺炉「すまねぇな、あーゆー人なんだ。気にするな」
娘「いらっしゃい!まぁまぁ!可愛い女の子じゃない!」
少女「ゥ......」
紅丸の後ろで警戒する少女だったが
紺炉や紅丸の説得のおかげで
なんとか髪を切らせてもらえるくらいになった
娘「どれくらいにしましょうか...とりあえず前髪は切らなきゃね」
紅丸「なぁ」
娘「どうしたの?」
紅丸「髪、残せねぇか?」
紺炉「どうした紅、そんなこと...」
紅丸「せっかくの女の髪だろ。それに綺麗だ...とオモウシ」
語尾は小さかったが2人にははっきりと聞こえていた