津軽高臣 【恋人は公安刑事】手のひらの虹 ※書き直し版※
第1章 デートの約束(主人公side)
午前中ずっと、先週の潜入捜査の報告書と、百瀬さんに押し付けられた書類のチェックとPCに入力作業でバタバタしていたわたしは、気分転換に後藤さんに貰った缶コーヒーを持って、警察庁の屋上に来ていた。
津軽さんと両思いになって、気付けばもう一ヶ月以上も経っている。
図らずしも、お互いの気持ちを知ったあの日の公園の帰り道。
津軽さんの気持ちがわたしに向いてると知って信じられない程嬉しかった。
津軽さんは、警察庁の女の子全員の憧れの的の上司だし、わたしを嫌っていると思ってたから。
お互い『好き』だと言う言葉で確認は未だにしていない。
お互いの間に流れる前とは違う空気で、分かり合えてるだろうという様な仮定法の状況だ。
8月末の空は、秋の様相に移り変わり始めている。
頬に当たる風が心地良い。
わたしは、後藤さんに貰った缶コーヒーをグイッと飲んだ。
誰かの足音が聞こえて、振り返ると、津軽さんがわたしの方に歩いて来ている。
!!!
わたしの鼓動が早くなる。
職場で、津軽さんを意識しない様に気をつけているのだけども、昼休みで、わたし達以外は誰もいない屋上となると、津軽さんを意識しない事の方が難しい。
「ウサちゃんここにいたのか」
津軽さんの言葉から、わたしを探していたのが分かり、仕事モードに頭を切り替えた。
「先週の潜入捜査の件ですか?」
「ウサちゃんって、頭の中何時も、仕事ばかりだよね?」
津軽さんの言葉に、恋人としての拗ねた様な意味合いを感じて、また鼓動が跳ねる。
わたしの視線の先にいた津軽さんが、わたしの隣に来て空を見上げた。
津軽さんの整い過ぎた横顔が、わたしの方を向いて見つめられる。
両思いになってからは、整い過ぎた津軽さんの顔が眩しい。
その視線が恋人同士の様であれば尚更だ。
「今週の土曜日ウサちゃん、公休だよね?デートするから」
「デ、デートですか?」
思わぬデートのお誘いに声が上擦る。
「行けるよね?」
「はい....大丈夫です」
「じゃあ、空けといて。詳しい事は、また連絡する」
津軽さんは、それだけ言うと、屋上から出入口へと戻って行く。
(津軽さんの顔が少し赤く感じたのは、わたしの見間違え?)
(津軽さんと両思いになって始めてのデートだ〜〜〜!!)
わたしは、午後からの仕事も頑張る事を心に誓って、屋上を後にしたのだった。