第25章 藤の華に揺れる〜❷ 〜
今俺は何故だか腹の匂いを嗅がれている
居た堪れない。
猫にならなければ一生わからないこの感覚に恥ずかしさが勝る。
心なしか肉球もぷにぷにされている気がする……
うむ!穴があったら入りたい!!
『にゃー、』
『っ!ごめんね!つい、我を忘れてしまったわ。』
鳴き声に気付いてそっと下ろしてくれた。
『杏寿郎さんならきっと、私達の幸せを願うよね、よしっ!決めた!!』
急に立ち上がり、掛けて行く。
部屋に着くなり手紙を書き始めた。そこへタイミングよく要が来る。
猫の俺に一瞬ビックリするが、ジッと見つめられた。
脚に手紙を括らせて冨岡の元へと飛び立たせる。
『要、お願いね、気をつけてね、』
仏壇の前に座る憂の隣に座る。
『…杏寿郎さん、報告が遅くなってすみません。実は前に冨岡さんに結婚してほしいと、言われました。私は子供達の事。杏寿郎さんの事。煉獄家の事。沢山考えました、
私はまだ杏寿郎さんの事お慕いしています、この気持ちは無くなりません。
こんな優柔不断な私を好いてくださり、子供達にも慕われている
冨岡さんにも揺らいでしまうのです。
杏寿郎さん、お許しください。
私の最後の我が儘を。』
泣崩れる憂の隣で、こんなにも愛されていたと思えた事に
魂が震えた。
突如猫の身体が淡い光に包まれた
『……?!な、に??』
涙が止まり猫を見つめる
「憂、愛しき我が妻。生まれ変わったら、今度は幸せな家庭を築いていこう。君を探すよ、必ず。ありがとう、幸せになってくれ!」
『杏寿郎さん?…会いたかった、寂しかった、何年掛かっても、私も探すから、待っていてくださいね、』
淡い光に触れると空に溶けて消えていった。
その日は杏寿郎の使っていた羽織りに包まれて夢へと落ちていった。