第25章 藤の華に揺れる〜❷ 〜
ふといつのまにか寝てしまっていた様だ。
遠くから子供の声が聞こえた。
コロコロと転がってきた球がぽちゃんと池に落ちた。
ガサガサと音を立てて近づいてくる足音が早かった。
「よもや、この池をしらないのか?」
草むらから姿を出したのは小さな女の子だった。
一瞬眼鏡あったが身体は池へとまっしぐらだった。
「危ないっ!!!」
身を呈してその子を草むらへと押し返した反動で自信が池へと落ちていった。
ドボンっ!!
ゴポッ!体に力が入らない、まるで水に溶け込んでゆくようだった。
ゆっくりと瞼を閉じる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『かあさま!にゃんこが!たいへん!』
『本当、怪我はしてないみたいだけど、うちに連れて帰ってあげましょうか、』
『おれ、千にいに言ってくる!』
『桜寿郎頼みましたよ、あとお祖父様にも伝えてくださいね』
『にゃんこ大丈夫かな?』
『起きないね、でも心臓は動いてるから、何かにビックリして倒れちゃったのかな?』
猫を抱き抱えて帰路に着く。
『おかえりなさい、桜寿郎から猫の事聞いてます、ひとまずこの箱の中に』
『ありがとう、早く目を覚ますといいんだけど、』
『あんがみてるよ!ねこさんおきたらおしえるね!』
『おうもみてる!ねこさん!』
『ふふ、頼もしいわね、それじゃあ頼みましたよ。』
ひとまず猫を子供達に任せて夕餉の支度に取り掛かる。
猫が起きた時用のねこまんまも用意する。
どこからかいい匂いが鼻を擽る。
ゆっくりと目を開けると眩しい光が入ってくる、
上を見上げると大きな子供の顔が…
「(子供なのに、デカい??どう言う事だ?しかもよく見ると俺に似ている。我が子なのか??よもや!こんな大きくなるとは!!)
にゃー、にゃっ!?」
『母上ー!ねこさんおきた!』
『よかったねー!ねこちゃん!よしよし、』
「(母上、と言う事は、憂、?)」
すると箱を覗き込む顔が増えた、愛してやまない愛しい人だった。
ゆっくり袖をめくり鼻先に手を出されると
匂いを嗅ぐ、懐かしい香りと料理の匂いが混じる。
頭をふたつ撫でて背中を通るとにっこりと笑顔と目があった、
その目に映る姿はまるで猫の様だった。