第25章 藤の華に揺れる〜❷ 〜
『桜寿郎、杏!お父様とお祖母様にお線香あげるわよ!』
『母上ー!あんが僕の木刀取ったー!!』
『おうのちょっと借りただけでしょー!母様!あんず悪くない!』
小さな体で一生懸命僕が私がと詰め寄ってくる。
2人とも杏寿郎さんそっくり、煉獄家特有の焔色の髪をして居た
女の子の杏は瞳は私の色を受け継いだとても綺麗な子だ
男の子の桜寿郎は父親の生写しの様だった。
2人とも活発で人懐こくお爺様と千寿郎さんの後をついて回っては
楽しそうに木刀を奮っている。
毎朝仏壇に手を合わせて1日を始める。
『とーさま、ぼくたちをみまもってください!』
『とーさま、わたしたち、きょうもがんばります!』
それぞれ言い終わるとまた慌しく部屋を出て行く。
『杏寿郎さん、貴方の子供達は今日も元気です。たまには、逢いに来てくださいね、夢の中ですらなかなか逢えません。…杏寿郎さんに逢いたい。』
ポタポタと着物に雨が落ちる。
今朝はどんより曇っていて、気分が落ち着かなかった。
何か起こりそうな気持ちに胸がザワザワした。
『かあさま!せんにいがご飯できたって!いこー?とーさま!またあとでくるからね!』
グイグイ引っ張る力に驚きつつも笑みを溢す。
『あなた、また後でね、桜寿郎まって、杏も、2人とも力があるわね、』
あっという間に居間につきわたしが1番最後だった。
『すみません!お待たせしてしまいました、』
『よい、今日は鍛錬が速く終わっただけどだ。気にするな。頂くとしよう』
皆んなの声が重なりあい、明るい声の響く朝だった。
ここに杏寿郎さんがいたら、もっと良かったのにと
誰しもが思っていた。