第25章 藤の華に揺れる〜❷ 〜
「憂、っ母上!この人が俺の愛した女性です!」
「杏寿郎が好いた方なら素敵な女性なのでしょう?」
「はいっ!!母上の様に芯のある女性です!」
水面から目を離さずに話す我が子に
この歳でここに来てしまった事をどれだけ悔しいと思ったか。
「!母上!父上ですよ!千寿郎もいます!この老夫婦は憂の育ての親御さんです!産まれるのでしょうか?」
「そうですね、槇寿郎さんが廊下をウロウロとしているという事は
もう時期ですね、…ふふ、変わらないのですね、杏寿郎の時も千寿郎の時もそうでしたよ、」
懐かしむ母の母をみて、自分の掌を握りしめる。
「…そうでしたか、男は無力です、愛しい人が命を削って新しい生命を産み出すのに、何もしてやれない。俺は手を握る事声を掛けてやる事すら叶わない。憂!!!頑張れ‼︎俺は見ているからな!」
突然の大声に瑠火はビクッとしてしまったが、
その姿が昔の槇寿郎と重なって見えた。
血は争えない。
「ちゃんと届いていますよ。心はいつも一緒ですから。」
「はい!俺もそう思います!」
ただ、一度もこの手で抱き上げてあげられなかった事が心残りだった。
水面が揺れて憂と2人の赤子が映る
ふと憂と目があった気がした。
「憂、お疲れ様。ありがとう。」
"杏寿郎様、いつまでもお慕いしています。"
ポタポタと波紋が広がる
涙が水面を揺らす
「憂、…」
どれくらい経ったのか、ここには時間と言う概念があるかは分からないが
気付いたら母上は居なくなっていた。
この場所を離れたがたかった。
「未練がましいな。幸せになって欲しいと願っているのに。」