第23章 藤の華に揺れる〜❶〜
白い湯気があがる湯に浸かりふぅと息を吐く
『まさか父上と縁のある家にだったとはなぁ、』
今日一日沢山の事があった。夜から任務に出て、朝は野党を見つけてしまい、要と逸れてしまい竹林を歩いていると女性が大荷物でふらついて居た。
近くで見た顔はとても綺麗だった。
周りにも美しいと思う顔は沢山揃って居たが、異国の美しさはまた別だった。
それに同い年だとは思わなかった。
『泣き顔も愛いかった…っ俺はなんと不埒な事を…』
ぶくぶくと顔を湯に沈めた。
これまで色恋などは二の次に鍛錬ばかりして来たのだ。
こんな感情を抱いた事も無い。
だが、自分のやるべき事を考えると色恋などに現を抜かしている余裕など到底無かった。
残される側の気持ちが分かるからこそ、安易に触れてはいけないのだと。
『ぶはっ!…ハァ、ハァ。』
風呂をあがると良い香りがしてきた。
パタパタと廊下を歩く音、この屋敷には老夫婦と娘が1人。
だが暖かい雰囲気が漂っていた。
『あ!煉獄様ちょうど支度が整いました。髪まだ濡れていますね、新しい手拭いをどうぞ、そちらは下げますので。』
新しい手拭いを受取ると綺麗な華の刺繍が施されていた。
『藤の花か、とても綺麗だ。』
『小さな頃に少しだけ母に習ったんです。小さな物しか出来なくて、お恥ずかしいです。さぁ、此方へどうぞ、沢山召し上がってくださいね、』
愛おしい者を見る様な眼差しにドクンと胸が高鳴った、座敷には豪華な食事が用意されていた。
『美味そうなご馳走だな!』
『今夜は初めてのおもてなしなので、張り切りました!ふふっ、お口に合えば嬉しいです。ご飯をどうぞ、煉獄様』
いいな、と思ってしまった。夫婦の様なやり取りに思えてしまい、顔に熱が集まるのを誤魔化す様に受け取る。
『ありがとう!いただきます!!』
『ふふっ、私もいただきます。』
『!!!うまいっ!!』
突然の大声にビックリする、
『うまいっ!!鯛は俺の好きな魚だ!あとサツマイモの天麩羅は大好物だ!わっしょい!わっしょい!』
情報量が多くて一瞬戸惑うが、口の端にご飯粒をつけて
わっしょいを連呼する姿を見てつい笑ってしまう。
そんな私を大きな瞳でじっと見ていた
『ごめんなさい、煉獄様ここに、ご飯粒付いていますよ、』
そっと口元に手を伸ばし取ると手を取られ指をペロリと舐められる。
