
第23章 藤の華に揺れる〜❶〜

全ての買い物を終える頃にはちょうど良い時間になっていた。
この時間に帰らねば家に着く前に日が沈んでしまう。
行く先々で話に捕まってしまった為お腹が先程からきゅるきゅると鳴る
うーんと考え、早く帰る事にした。遅くなって心配を掛けるわけにいかないのだ。
重くなった荷車を頑張って引き街を出る。
少しずつ日が傾き始めた竹林の道を歩く。ギィギィと車輪が鳴りガタンと傾いてしまう。
『っ!!!嘘!車輪壊れたの…どうしよう。まだ半分以上道はあるのに』
麻紐で縛った荷物は落ちなかったが、荷車だった為いつもより多い荷物量だった。
しかもこんな田舎道誰も通りはしない。
だが、夜になれば鬼が出るので此処でもたもたして居られないのだ。
竹林は今は日が差しているが後半刻しないうちに暗くなる。
『〜っ持てる分だけ待つ!』
20キロある米を紐で縛り背負う
生物を詰め込んだ深い竹籠に野菜を詰める
『っおっっっもいっっっ!後は勿体ないけど仕方ない。明日取りに来よう。』
道の端に寄せておく、運が良ければあるはず。
余りの重さにふらふらしながら歩いて行く。
お腹も空いたし暑いし重いし、ハァハァと浅い呼吸を繰り返す。
まだ荷車が見えるので全然進んで居なかった。
『こんな事なら、荷車見ればよかった、誰か来ないかな、出来ればいい人で、』
ガサガサと近くで音がした。
ドキドキと鼓動が早くなる。
(誰か来てとは言ったけど、竹藪から来るのは、普通の人じゃ無いんじゃない、、怖いよー!!)
ヒヤヒヤしながら歩き始めると背後から肩をポンと叩かれる
『きゃー!ごめんなさい、私は食べても美味しく無いです!!だから許してー!!』
その場に蹲り泣きながら早口で喋る
『すまない!驚かしてしまったな!!君が思う様なモノでは無いので安心して欲しい!』
大きな声だが、優しい声色を含んでいたのでそっと振り向く
その人は大きな目をビックリしたような顔をして見つめてくる。
『あの、すみません、ビックリしてしまって、失礼しました。』
『いや、こちらこそ済まなかった。…そんなに荷物を持っていたからどうしたのか気になって来てしまった。驚かせるつもりは無かったんだ、』
そう言って散らかってしまった物を一緒に拾ってくれた。
『あそこにある荷車が壊れてしまいして、持てる分だけ運ぼうとしていたのですが、重くて全く進めなかったのです』
