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貴方の色に染めて[鬼滅]

第23章 藤の華に揺れる〜❶〜


ただ遠くで見ているだけで良かった。
こんな想いはあの人の重荷になるだけ。
そう心に秘めておけば良い。

此処は藤の家紋の屋敷少し人里離れた所にある。
そこに私姫月憂は祖父母と住んでいた。

藤色の着物に割烹着をつけて、屋敷の外を掃く。
こんな所だから中々人に会う事はない。
祖父母ももう年なので買い出しに街へ降りるのも私の仕事だ。

『街へ買い物に行くのだけれど、足りない物は他にないかしら?』

『憂すまないが米が切れそうだから、荷車を持って行って買ってきておくれ、』

『いつもの所でいい??』

『あぁ、後は昨日頼んだ物で頼むよ、あといつも言ってるが遅くならない様に、何かあれば荷物はいいから身を守るんだよ、』

『お祖母様、分かっているわ、だから朝早く行くのよ、ありがとう。匂袋もあるし大丈夫よ!行ってきます!』

買い物用の荷車を轢き街へと続く道を歩く。
サラサラと吹く風に金髪が流れる。

『気持ちのいい日、…』

蒼空に一羽の鴉が飛んでいた。

『自由な鳥、羨ましい……急がないと、』

止まっていた脚を動かす。
怖いのは鬼もそうだが、人も然りなのだから。

キィと車輪の軋む音と私の足音、暫くすると街の入り口に着く。

深呼吸をして、意を決して進む。
街の人が振り返るが何事もない様に歩みを進める

私の外見が人を惹きつけてしまうからだ。
ハニーブロンドの髪、蒼の瞳。母が異国の出身でその血を濃く継いでしまったからだ。
その他にも私を見る理由がある。

『ごめんください、こんにちは、いつものお米ください。』

『憂ちゃん!いつ見ても綺麗ね!いつもの量でいいの??』

店の奥さんが出て来てくれる。運んでくれるのは旦那さんだが、いつも優しく声を掛けてくれるので嬉しかった。
話もそこそこに次々と買い物を済ませて行く。
サツマイモがふと目に入り手に取ろうとすると小さな手が伸びて来た

『『あっ、』』
思わず出た声が重なった。

『ごめんなさいね、どうぞ、』

『あっ!でも、お姉さんの方が先でした…』

困り眉が余計にシュンとしてしまった

『遠慮なさらないで?下の者に優しくするのが年長者の責務なのだから、』
にっこり微笑み男の子の手を包む
赤く頬を染めてぽーとしている子の頭を撫でて店を出る。

『天使だ兄上にも教えないと』



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