第16章 獅子と猫の鬼ごっこ[恋仲編]
ピチャン、ピチャン、水の音?
薄らと目を開ける、身体は痺れて動けない。
視線だけで辺りを見回すが暗くて何も分からない。
鉄の匂いと腐敗臭でここが鬼の住処なのだろう。
遠くで女の喘ぎ声がした、快楽に溺れる声の後耳を突き刺す様な悲鳴が聞こえる。
ガタガタと震える、
(私、ここで死んじゃうんだ、杏寿郎さん、ごめんなさい、)
ポロポロと涙が溢れる。
自分はやはり疫病神なんだろう、関わる者を幸せに出来ない、
ならばもうここで終わりにしたい。
苦しむのももう終わりにしたい。
皆んなの元に行けるかな、
そっと目を閉じた。
いつかくる恐怖に震えながら。
村の若い娘が最近居なくなっていると、若い男が来て嫁にと連れて行ったので、最初こそ気にして居なかったのだが、
そんな事が周囲で立て続けにあり、果てには娘と連絡のつかない家が多いと言う。
そして、裏山の洞窟へと若い男女が消えて行くのを見た事がある人にその場所を聞き走った。
禍々しい鬼の気配、一般隊士達もやってきた。
隊士には自分の後をついて来る事、生存者発見したら隠のところへ運ぶ事。
鬼が1人とは限らないので注意する事を伝え中に入る。
奥に行くに連れて冷えて来る。
鉄と腐敗の臭いが鼻をつく。
足元にはいくつもの着物が重なっていた、その量を見て額に青筋が浮かぶ、
『(もう何年もの間人を喰らっていたのか、)』
----いやぁ!離して!!
響く声に反射して走る、灯りの先には憂の姿があった。
『憂!!炎の呼吸 伍ノ型 炎虎 』
炎の虎が鬼に襲い掛かる。その隙に憂の側に寄り声を掛ける
『っ、杏寿郎さん、杏寿郎さん、』
ガタガタと震えしがみつく憂をそっと抱きしめる。
『もう、安心だ、任せなさい。隊士と共に外へ』
憂を隊士2人に任せて鬼と対峙する。
『なぜ、キサマは鬼になどなった。お前は憂を愛していたのだろう、』
鬼は大勢を立て直し笑いながら言った