第16章 獅子と猫の鬼ごっこ[恋仲編]
煉獄家では土産の団子が出されていた。
杏寿郎は先程の憂の僅かな異変が気になっていた。
些細な事で自分を責めてしまうのは過去の事と関係があるのだろう。
(どうしたものか、憂あの頃の様にもう一度笑ってはくれないのだろうか。)
あの時自分に余裕があれば、こんな事にはならなかった。
君を追いかけていれば、歯痒い日々を過ごさなくて良かった。
力の無かったあの頃の自分を責めても不甲斐ないだけだ。
『過ぎた事を嘆いても仕方あるまい、やっと掴んだのだ、離さなければいい事だ。』
独り言の様に呟き、団子を口に含んだ。
『兄上!やはり憂さんの作る団子は美味いです!時間が経っても硬くならないのが本当凄いです!』
『そうだな!千も好きか!』
『はい!早く兄上のお嫁さんになって欲しいです!』
にっこりと笑い団子を頬張る千寿郎。
--カァー!杏寿郎!鬼出現!甘味処ノ娘ガ攫ワレタァー!下弦ノ鬼ノ可能性!急ゲェーー!!
『っ!憂⁉︎何故狙われた?鴉くん、案内を頼む!』
急いで羽織と日輪刀を手にし駆け出す
夕陽はもう沈む様に溶け出していた。