第16章 獅子と猫の鬼ごっこ[恋仲編]
幼い頃から鍛錬と剣術だけに力を注いで来た男だ、男世帯であるが
父は諸事情で酒に溺れ、弟は幼すぎた。
色々考えて出た答えに2人は頭を抱えた。
『煉獄、お前男と女が付き合うってどうする事だと思う?』
宇髄が真剣に聞いてくる。
『むう、逢瀬を繰り返し、祝言を挙げ、子を授かる事だと思っている。』
おおっ!まともな答えに少し2人はホッとする。
『俺とて、コウノトリが子を運んで来る等とは思っていないぞ、心外だ!!』
『お前もやっぱり男だもんな!良かった!』
『安心した所で俺たちは行くわ、』
奥から憂が戻って来た。
『宇髄さん、これお嫁さん達と食べてくださいな、』
『ありがとうな、お代足りるか?』
『はい、大丈夫です、不死川さんもお帰りですか?』
『あぁ、用があってな。また来る。煉獄に泣かされたら直ぐに言え』
『また嫁と食いにくるからな、憂』
2人は頭を撫でて消えて行った。
『素敵なお友達ですね、羨ましいです。』
2人を見送り新しくお茶を出す。
『2人共憂を気に入っている様だ。』
『…そうですか、あ!杏寿郎さん昼餉は食べて行かれますか?』
『今日はもう家に帰るよ、千が待っているのでな、』
『では千寿郎さんとお父様へお団子をお持ちください。いつも同じで申し訳ないのですが、』
『その様な事は無い!千も父上も大層気に入っている!来客にも喜ばれるのだ!自信を持て!胸を張れ!』
結局自分には同じ事しかしてあげられない。こんな自分は杏寿郎さんにやはりつり合わない。いつもそんな自分を救いあげてくれるのは杏寿郎さんの言葉だった。
『っ、はいっ!』
『憂はやはり笑う顔が1番だな!では、また来るぞ!』
『はい///お気をつけて、』
風の様に消えて行った。
夕暮れ時そろそろ店を閉めようとしていた時だった。
ジャリっと後ろで足音がし、振り返る
『ごめんなさい今日はもう、っ!』
相手の顔を見て驚愕し声が出なくなる。
夕暮れに染まる顔は忘れて居た記憶を呼び覚ましていった