第9章 武将達の秘め事①
「あれは結構、着痩せする性質(タチ)だな。脱がせたら、なかなかだぞ。胸なんかもかなりデカイほうだと思う」
「なっ、見たんですか!?政宗さん」
「馬鹿っ、俺ぐらいになると、見なくても分かるんだよ。あれは信長様の好みに限りなく近い」
「………………」
思わず皆が、頭の中で朱里の肌を思い浮かべてしまったことは、想像に難くない。
「あの、皆様、朱里様は心の優しい良い方ですよ。名門北条家の姫様ですが、偉そうな所もなく、純粋で表裏のない方です。信長様も朱里様のそのようなお人柄がお気に召したのかもしれませんよ」
それまであまり話に入ってこなかった三成が、至極マトモな自論を述べるのを、武将達は黙って聞いていた。
(確かに、朱里は気さくでいい子だよな。俺の料理も美味そうに食ってくれるし)
(朱里が来てから、御館様が優しいお顔をされることが増えた気がする。三成の言うことも、あながち間違っていないかもしれないな…)
(三成にしては、いいこと言ったな…まぁ、あの子がいい子なのは、俺だって分かってたけど…)
(くくっ…皆、何だかんだ言いながら、小娘のことが気に入っているらしい。無論、俺もだがな…あんなに揶揄いがいのある面白い娘はなかなか得難い。御館様はきっと、あの娘を手離されることはないだろう…)
誰もが黙ってしまい静かになった部屋で、皆がそれぞれに、朱里の花が綻ぶような笑顔を思い浮かべていた。
今宵もまた、信長の傍で幸せそうに笑っているのだろうか……
魔王と恐れられる信長の寵愛する姫
その笑顔を永遠に守ってやりたいと、各々が、そう思った夜だった。