第5章 信長の初恋
「っ…くっ…ひっく、っく…ううぅー」
「………………何故、貴様が泣く?」
「っ…だって、ううっ…だってぇ…」
信長様の初恋の話…それは私の予想以上の内容で…長い長い話が終わる頃には涙が止まらなくなってしまっていた。
「………だから言っただろう?後悔しても知らんぞ、と」
ふっ…と呆れたような苦笑いを溢しながら、涙に濡れる私の頬に指先で触れる。
「んっ……」
「………面白くも何ともない話だ。俺が弱かった頃の…な」
自嘲気味に呟かれた言葉には、もう悲しみも後悔も含まれていないようで、ただただ淡々としている。
信長様の中では、完全に過去の話、となっているようだ。
「…………初恋は実らん、という話だったな」
妙な結論付けをした信長様は、それ以上、この話はしたくないようだった。
「……信長様はお強いです」
「当たり前だ。もう二度と、大切なものはこの腕から離さん」
「っ…あっ…」
ぐいっと強く腕を引かれて、腕の中へと引き寄せられる。
そのまま、ぎゅーっと強く抱き締められた。
決して離すまい、というかのように………
「朱里、愛してる…俺の過去は変えられんが、俺は…貴様との未来が欲しい」
「っ…はいっ…私も、ずっと貴方のお傍にいたい…」
過去は変えられない
辛くて悲しい過去は貴方を傷つけ、そして強くした
信長様
貴方を愛しています
貴方の過去も未来も 全てが大切だから
貴方の傍で、私はこれからも寄り添っていきたい
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