第33章 ハッピーイースター〜春待ちて
朱里は家康の言葉に戸惑ったように目を白黒させている。
「ふっ…そう言うな。これは俺が貴様にやるのだ。気に入らずとも黙って取っておけ」
「はぁ…」
(くくっ…この白瑪瑙のウサギを見て幼き頃の家康を思い出したことは…黙っておくか。此奴の機嫌を損ねては面倒だからな)
家康の不満顔を物ともせず、信長は愉しそうに喉奥を鳴らした。
その昔、家康がまだ幼かった頃
周りの思惑に流され、頼れる者もいないひ弱な三河の御曹司は野生の獣のような信長の前では弱きウサギのようだった。
それでも意地だけは人一倍強くて負けず嫌いで…愛らしい白ウサギはいつの間にか太々しくも頼りになる、信長にとってなくてはならない存在になった。
家康と朱里
二人は信長にとっていつまでも変わらぬ愛すべき存在なのである。