第33章 ハッピーイースター〜春待ちて
辛うじて保たれていた理性の糸がぷつっと音を立てて切れた気がした。
信長は繋がったままの朱里の身体を反転させて相対すると、抑えていた劣情を解き放つかのように激しく腰を律動させる。
ーぐちゅっ、ぐちゅっ…パチュッ!
ひどく淫猥な水音と、肌と肌が合わさる乾いた音が絶え間なく響いて、思わず耳を覆いたくなるほどだ。
先程までのゆったりした動きが嘘のような激しい抽挿に心もカラダもついて行けず、朱里は信長の腕に取り縋って懇願した。
「やっ…ま、まって…信長さまっ、いやっ…」
「待て、などと…酷なことを言う。生憎だがそれは聞けぬ願いだ。貴様も分かっておろうが」
「あんっ…でも…」
「俺を求める言の葉を貴様の口から直に聞きたかったが、これ以上焦らしては俺の我慢が保たん。まぁ、良い。目は口ほどに物を言うとも言うしな。今宵はそれで許してやる」
「えっ…?」
言われた言葉の意味が分からなかったのだろう、不思議そうに首を傾げる朱里に信長は悪戯な笑みを向け、その目尻にちゅっと口付ける。
目尻に浮かぶ涙を舌先で掬い取ると、朱里は情欲に染まった瞳を擽ったそうに瞬かせた。
「その蕩けた瞳で…俺だけを見ていろ」
「んあっ…あぁっ…」
熱を孕んだ紅玉の眸に真っ直ぐに見つめられながら、深くまで身体を暴かれる。
散々焦らされて熟れきった身体は与えられる快楽に従順で、呆気ないほど簡単に甘く蕩けてしまった。
その夜は湯殿での情事の後も一晩中熱に浮かされたように互いを求め合い、言葉を発する余裕などないほどに深くまで愛を交わし合った。