第4章 信長様の初めてのお菓子作り
「っ…あの…これ、何のつもりですか?」
翌日、安土城大広間で、定期報告のために久しぶりに安土を訪れた家康を迎えた俺は、用件が終わった後、自身の御殿へ帰ろうとする奴を引き留めて茶を供していた。
「あんたがわざわざ茶を出してくれるって……どういう風の吹き回しですか?」
顔中に不信感を漂わせた家康は、出された抹茶に恐る恐る口をつけている。
「ふっ…安心しろ、毒など入っておらんわ……それより、菓子も食ってみろ」
「っ…はぁ…」
これまた、恐る恐る皿の上から『ふりもみこがし』を摘んだ家康は、眉間に皺を寄せた、なんとも言えない表情で口に入れる。
「美味いか?」
「っ…まぁ…美味しいです」
少し表情の緩んだ家康を見て、内心ニヤリと笑む。
(やはり、甘いものは人の心を和ませるものだな……)
「その菓子な、俺が作ったのだぞ」
「……………っはあぁ?何やってんですか、あんた…」
「美味かっただろ?」
一転、苦虫を噛み潰したような顔になる家康に、追い打ちをかけるようにもう一度聞く。
「………美味しかったです……はぁ…」
「ん、よし」
愛しい者のために、手間をかけて何かをすることは、至極愉しい。
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