第27章 武将達の秘め事⑤
家康が密かに冷たい目線を送っていることには当然気付かない三成は、ニコニコと屈託のない笑顔で更にとんでもないことを言う。
「光秀様のお好みをお聞きできなかったのは非常に残念ではありますが…私、この本は信長様にも献上致したいと考えております。その際には是非とも信長様のお好きな体位をお尋ねしたいと……あっ、そうなると朱里様にもお聞きしないといけませんね。こういうのは女性の側からのご意見も重要ですよね!」
「み、三成、それだけはやめなさいっ!絶対にダメだ!俺が許さん!」
「くくっ…お前も苦労が絶えないな、秀吉」
「お前が言うなっ!」
一冊の本を囲み、武将達の言い合いはワイワイと尽きることはなく……いつも通りの夜は賑やかに更けていった。
互いに気を許し、憎まれ口を叩きながらも信頼し合った者同士、忌憚なく盃を酌み交わし、他愛ない話に花を咲かせる。
争いのない誰もが等しく平穏に暮らせる世の実現を皆がただひたすらに願いながら日々戦に邁進する武将達のひとときの休憩の時間だった。