第27章 武将達の秘め事⑤
とある日の夕刻
ここ安土にある伊達家の御殿では、毎月恒例の武将達による飲み会が催されていた。
「おい、三成。ぼんやりしてないで早く食え。せっかくの汁物が冷めちまうだろ」
「わっ、こら三成っ、余所見するな!溢れてるぞ、早く拭きなさい」
「……はぁ、呆れた。子供じゃないんだから…」
「くくっ…秀吉の世話焼きは筋金入りだな。今宵は御館様が居られぬのだから、もっと羽目を外しても良いものを…」
「うるさいぞ、光秀。お前は普段から羽目を外し過ぎなんだよ!」
温かな湯気の立つ料理を次々と広間へと運びながら、さり気なく各人の料理の減り具合を確認するという気配りを見せる政宗。
相変わらずのおっとりとした動作で料理を口に運ぶ三成。
(ただし、そのほとんどは口の端から溢している…)
三成の隣で甲斐甲斐しく世話を焼く面倒見の良い秀吉。
(これでは傍目にもどちらが主人か分からない…)
毎度お馴染みの光景に、呆れたように冷めた視線をやりながら黙々と料理を口に運ぶ家康。
(唐辛子のかけ過ぎで真っ赤に染まった料理はもはや何の料理だか分からない…)
ただ一人、達観したように金色の瞳を眇めながら優雅に盃を口へと運ぶのは光秀。
(酒を干す仕草はうっとりするほど優雅で色気に溢れているが、光秀の前に置かれた膳の上の料理はもはや原型を留めぬほどに混ぜ合わされていて、これもまた何の料理だったのか分からない…)
「……お前ら、自由過ぎだろ…」
月に一度、政宗の御殿で開かれる武将達の飲み会は毎回こんな感じでまとまりがない。
時に主君である信長が参加することもあるが、この日ばかりは互いに遠慮のない自由な会であることに変わりはない。
城で催される宴とは違い、女子も呼ばない男だけの会であるから、普段はなかなか表立ってはできぬような際どい話も、酒が進めば当然の如く……