第24章 夜はお静かに
先程まで熱く火照って達する寸前だったのが嘘のように、急速に頭も身体も冷静になっていた。
今宵は間一髪、何とか誤魔化せたが…これで暫くの間、朱里は夜伽に応じてくれないだろう。
隣の部屋であっても、最初のうちは随分と恥じらって、眠る結華の様子を気にしていたのだ。
今宵のように大胆に乱れた朱里を見るのは本当に久しぶりだったというのに……今宵のことでまた頑なになってしまう朱里が目に見えるようだった。
結華が産まれ、子と過ごす至福の時間は信長にとってもかけがえのないものとなった。
子を持つということが、こんなにも幸福で新しい発見が絶えない毎日だとは思ってもみなかった。
母としての朱里は優しく慈愛に満ちていて、信長の目から見ても好ましく、親子三人で過ごす時間にも満足していた。
結華が産まれて本当によかったと、信長は心の底から思っていた。
それでも、男というものは愛しい女の乱れた姿を見たいという欲を完全に抑えられるほどできた生き物ではないのだ。
子を産んで益々色香が増した朱里を前に、平静でいられる信長ではなかった。
(これは早急に何か策を考えねばなるまいな…)
ゴロンと布団の上に寝転んで、信長は天井を仰ぎ見る。
結華はもう眠っただろうか。
目を閉じて、可愛い寝顔を思い浮かべていると、穏やかな心地に包まれる。
やはり子というものは、無条件に可愛い。
信長の口元は自然と柔らかく緩んでいた。