第20章 お返しは貴方の愛で
(朱里の笑顔を見ながら飲む今宵の酒は、また一段と格別な気がする。愛しい者のために何かを為すということが、こんなにも楽しく心満たされるものだと…今更ながらに思い知るとはな)
「信長様?どうかしましたか?」
空の盃を手にしたまま、ふっ…と頬を緩めた信長の顔を、朱里は不思議そうに覗き込む。
「………何でもない。朱里、今宵は飲み明かすぞ。案ずるな、酔い潰れても俺が介抱してやる…閨でな」
「ええっ……」
「今宵の貴様は一段と美しく装っているようだが…その美しさを乱してよいのは俺だけだ。覚悟はできているのだろうな?」
「や、もぅ…信長様ったら…」
頬を朱に染めて恥ずかしそうにしながらも、朱里は信長の盃に嬉々として酒を注ぐ。
注がれた酒をグイッと一息で呷った信長は、至極愉しげだった。