• テキストサイズ

永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第19章 情炎〜戦国バレンタイン


バレンタイン当日

信長は早朝より馬上にあり、一路帰城の途にあった。

「御館様、この分なら昼過ぎには安土に着けそうですね。帰城の予定を早めたこと、朱里には知らせずともよかったのですか?」

隣に馬を並べて走らせながらも、少しも息を乱すことなく、秀吉は主君に話しかける。

本来なら帰城は今夜遅くの予定であったが、信長の命令で半日ほど予定を早めたのだった。

「構わん。あやつの驚く顔を見るのもまた一興だ。此度は長く留守にして構ってやれんかったからな。戻ったら存分に可愛がって、明日の朝まで離してやらん」

「っ……」
(明日の朝って…まだ陽も高いんだが…)

信長の明け透けな物言いに、秀吉は顔を赤らめながらも、朱里の嬉しそうな顔を思い浮かべて表情を緩める。

出立の際、帰城の日を随分と気にしていた様子だった。
遠方の国への視察で長らく御館様と離れ離れになり、寂しい思いをしているだろう。
少しでも早めに帰城できれば、きっと喜んでくれるに違いない。

朱里の笑顔を思えば、信長も秀吉も長い移動の疲れなど露ほども感じられないのだった。




休息の間も惜しんで馬を駆けさせて、信長たちは昼過ぎには安土に帰城した。
予定より早い主君の戻りに城の者たちは慌てふためき、出迎える者もまばらだったが、信長はそのようなことは気にするでもなく、足早に城内へと入っていく。

奥へと廊下を進むにつれて、信長は城内の様子にいつもと違う違和感を感じていた。

どことなく、そわそわと落ち着かない雰囲気があり、数人の家臣や侍女達とすれ違うも、皆が表情を緩めていて何となく浮き足立っているような気がするのだ……特に男どもが。

主人の不在をいいことに気が緩んだ様子を見せる者たちに、信長の顔が険しくなるのを見て、傍に付き従う秀吉はヒヤリと肝が冷える思いだった。

(御館様は怠惰を何より嫌われるからな。だが、普段ならこのような気の緩みが生じることはないのに…何かあったのか?)


「これは信長様、お戻りでしたか!」
「お帰りなさい、早かったんですね」

廊下の角を曲がったところで会ったのは、政宗と家康だった。
二人は楽しげな声で話しながら歩いてきたようだが、信長の姿を見て驚いて息を飲んだようだった。

「珍しいな、貴様らが連れ立ってやって来るとは」

「ええ、朱里に呼ばれて…」

「ちょっ…政宗さんっ…」


/ 424ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp