第18章 元日の秘め事
元日の夜
湯浴みから戻った信長は、そのまま真っ直ぐ寝所へと向かい、褥の上にゴロリと横になる。
「っ…はああぁぁ……」
魂まで抜けてしまうのではないかというほどの大きな溜め息に、先に湯浴みを済ませ寝所で待っていた朱里は、くすくすと笑い声を溢す。
「随分とお疲れのご様子ですね」
「ああ、さすがに疲れた。今日は例年以上に訪問客が多かったからな」
一日中、広間で客人からの挨拶を受けて身体が凝り固まっているのか、寝転びながら肩を揉んでいる。
「明日も朝から謁見がありますし、今宵は早く休みましょう」
お疲れの信長様に少しでも身体を休めてほしくて、行灯の灯りを素早く吹き消すと、私も信長様の隣にするりと身体を滑り込ませた。
「おい、暗くて何も見えんではないかっ!」
「えっ、当たり前ですよ、もう寝るんですから」
「たわけっ、誰が寝ると言った?」
「ええっ…や、だから明日も早いから、もう寝ましょうよ?」
暗闇の中で、信長様の大きな手が手探りで肌を弄ってくる。
「や、ちょっと…止めて下さい、信長様っ!あっ、ンッ…ちょっ、どこ触ってるんですかっ!?」
「………暗いから見えん」
骨張った大きな手が、太腿の内側の肌の柔い部分をすりすりと擦っている。
その手が段々と上へ上へと上ってきて……
「ちょっ…やだっ、もぅ、寝なきゃダメですよ…」
「分かっておらんな、貴様は。朱里、貴様を抱かねば俺は眠れんのだと、何度言えば分かる?」
「そ、そんな…私を放って勝手に先に寝ちゃう日もあるじゃないですか…ってあっんっ…やぁ…」
ーぐちゅっ…
「ひっ…うっ…やっ、指ぃっ…」
「ん?あぁ…すまんすまん、手元が狂った。暗くて見えぬゆえ仕方がない」
(嘘っ…これ、絶対見えてるし…信長様の意地悪っ…)
「くくっ…ところで、俺が先に寝てしまった日は、貴様はどうしているのだ?放って置かれて…一人で身体を疼かせているのか?」
「やっ…違っ…あっ、く、ふっ…あ、そんな…混ぜちゃ…やっ…」
暗闇の中、グチュグチュッと卑猥な水音が耳を犯すように高らかに響く。
(あぁ…暗いから余計に敏感になっちゃう…見えないと、余計に指の動きが生々しくて…すごく感じるっ…)