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永遠の恋〜⁂番外編⁂【イケメン戦国】

第17章 小さな恋人②


「信長様、お帰りなさいませ…っと、朱里は…?」

城門前で待っていた秀吉は、信長の腕に抱かれた朱里を気遣わしげに窺う。

「疲れて眠ってしまったようだ。このまま天主に連れていく」

「はっ…あの、朱里の様子は…元の姿に戻りそうですか?」

「さぁな、原因が分からぬうちは何とも言えん。が…存外、一晩眠れば戻っておるやもしれんな」

「そうだといいんですが…」

表情を曇らせ眉尻を下げる秀吉を横目に、朱里を抱いたまま天主へと向かう。
肩口に頭を預け、すぅすぅと穏やかな寝息を立てる朱里の髪を、起こさぬようにそっと撫でる。

肩まで伸びた艶やかな黒髪に指先を通し、その滑らかな手触りを確かめるように何度も往復する。

やがて天主に着くと、信長はその足で寝所へ向かい、眠る朱里を褥の上へ、そおっと寝かせた。
寝かせた拍子に顔に落ち掛かった髪をそっと払ってやる。
大切な宝物を壊さぬように…その手つきは、とても優しく丁寧だった。

しばらくは、褥の横に胡座を掻いて座り、眠る朱里の顔を飽きることなく見つめていた。

このまま朝まで眠るのだろうか…

今日は朝から朱里が足りない、触れたい…そう思いながらも、目の前で眠るあどけない幼女には、さすがに手は伸ばせない。

信長は穏やかに眠る朱里の隣に、肘を枕に身を横たえる。
疲れてるわけではなかったが、何となく傍を離れ難かったのだ。

楽しい夢でも見ているのだろうか、口元をむにゃむにゃと小さく動かしながら柔らかく緩めている。
その様が堪らなく可愛くて、信長はその福々とした頬にそっと顔を近づけた。

頬に口付けるぐらいなら…許されるだろうか。
軽く触れるだけならば…罪深くはないだろうか。

(小さな貴様は愛らしいが…思うまま触れられぬのは、この上なくもどかしい。朱里…次に目覚めたら元に戻っていろ…命令だ)


眠る朱里の頬に遠慮がちに落とされた信長の口付けは、羽根よりも軽く、柔らかなものだった。



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