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わたしは、この日のために【鬼滅の刃】

第2章 第二章 煉獄家へ


『やはりこの着物、申し訳ないです。わたしが着ていたものに着替えてまいります。』
早口にまくし立てる愛。
「いや、着られないでいるより誰かに着てほしい。おいてあっても仕方のないものだ。あとでぜひ母上に見せてあげてほしい。母上も喜ぶ。」
嘘偽りのなさそうな終始優しく柔らかい雰囲気で杏寿郎は話す。

漫画で見ているよりも懐が深く、優しい空気を纏っているひとだわ。

「さ、その前に夕餉だ。父上と千寿郎が待っている。」

ドキリ
そうだ、お父様がいらっしゃった。

「父上、ただいま戻りました。昼寝をされていたようだったので、挨拶が遅れました。今日から炎柱の継子になった愛です。しばらくは住み込みで稽古をつけます。急な話ではありますが、よろしいでしょうか?」
杏寿郎は丁寧な口調で父へと話しかける。
しかし、当人の父は息子の顔をチラリと見ることもなく、黙々と箸を進めている。
「…勝手にしろ。」
一言そう吐き捨てた。
「愛!よかったな!明日から早速稽古だ!」
『煉獄様のお父様、佐藤愛です。ご迷惑にならないよう精一杯頑張ります。よろしくお願いします。』

愛は槇寿郎の視界にしっかりと入るようにずずいと前に出る。

わかっていてもやっぱり腹が立つ。
煉獄さんへのこの態度。
嫌になるわ!

「娘、この着物は…」
初めてしっかりと愛を見た槇寿郎はハッとした顔になる。
『失礼ながら、お母様の大切な着物をお借りしております。その点に関しましては謝罪をいたします。』
口調は丁寧だが、力強い言葉で返す。
「別に…いい。」
すぐにふいと顔を背けて、いつもの無気力な顔に戻る。

「わぁ!愛さん、その着物着てくださっているのですね。母のお気に入りだったのですよ。よくお似合いです。」
千寿郎の場を和ます声が聞こえてきた。
「兄上と愛さんのご飯を持ってきましたよ。」
先程の少しピリッした空気は解け、よい匂いが辺りを漂う。
『千寿郎くん!ありがとう。とてもおいしそうね!』
「うまい!うまい!」
いつの間にか、いただきますをしてすでに食べ出している杏寿郎。
「うまい!うまい!」
その言葉が何度も聞こえる。
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