第2章 第二章 煉獄家へ
みな一通り食べ終わる。
『煉獄様』
「「ん?」」
愛が話しかけると二つの声が返ってくる。
『あ…あ、すいません。ここではみなさん煉獄様でしたね。』
愛は顔を赤くして慌てる。
とりあえず応答はしたものの、反応から見て自分のことではないと悟った槇寿郎は
黙って部屋を後にする。
『きょ、杏寿郎様。こんなにもよくしていただき、ありがとうございます!明日からも頑張ります!それだけです!後片付けしてきます。』
あわあわと慌てながらまくし立てる愛。
「うむ、よい心意気だ!明日から頑張ろう!」
『っはい!』
「今日は疲れたであろう。後片付けをしたら、すぐに休むように。」
またもや、杏寿郎に頭をポンとされる愛。
温かい気持ちになる。
『ありがとうございます!』
愛はパタパタとお皿を持って台所へと向かう。
愛がいなくなったところで
「む…なぜだか愛に触れたくなる。なぜだろう。」
杏寿郎はそうつぶやきやがら、自分の大きな手をじっと見つめた。
片付けが終わったあと、案内してもらった杏寿郎の母の仏壇の部屋に入る。
『杏寿郎様のお母様、初めまして。佐藤愛と申します。このたびは杏寿郎様にお助けいただき、またさらに継子にもしていただきました。さらに、お母様の大切なお着物もお借りしております。…杏寿郎様を産み育ててくださり、ありがとうございます。そして、これからわたしは杏寿郎様の助けとなり、お守りする所存です。どうか安からに。』
誰もいない部屋に愛の声だけが凛と響く。
わたしがここに来た訳はわからないが、ここに来たからにはやることは一つ。
杏寿郎様を死なせないこと。
ただ、それ一つ。
愛は改めてそう誓い、部屋を後にした。