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わたしは、この日のために【鬼滅の刃】

第2章 第二章 煉獄家へ


目をつぶっているのに、スルスルと帯を結んでいく杏寿郎。
距離がすごく近く、バクバクと脈打つ鼓動が杏寿郎に聞こえやしないかと愛はハラハラする。
いや、聴こえているかもしれない。時折、杏寿郎の逆立った髪の毛が愛に触れる。
『…ん』
パッと口元を覆ったが遅かったようだ。
「あぁ、すまない。くすぐったかったか?」
目をつぶりながらも口元を緩めてそう話す。
『い、いえ…その、すいません。』

「うむ!できたぞ!ちょっと歪んでいるかもしれないから、あとは自分で調節してくれ。」
『あ、はい。すいません。ありがとうございます…』
愛は火照った顔を少しでも沈めようと両手に手をやる。

まだ、できれば目を開けて欲しくない…!

「あぁ、それと…む、もう目を開けてもよいか?」
『あぁ、すいません!もう大丈夫です!お気遣いいただき、ありがとうございます。』
顔が見られてしまう!と思い、うつむく愛。

「愛は俺の継子になったんだ。迷惑なことはない。わからないことは何でも聞きなさい。」
柔らかく、杏寿郎は微笑む。
そして、またポンと愛の頭の上に手を置く。

「さぁ、今から夕餉だ。千寿郎が作って待っていてくれている。行くぞ。」
頭の上から手を離す杏寿郎。
愛はまだ杏寿郎の手の温もりが残る自分の頭を触る。
「はい!」
とびきりの笑顔と元気な返事で杏寿郎を見つめる。
杏寿郎の顔がさらに緩む。
「愛、着物よく似合っているぞ!」
杏寿郎はどこか懐かしむような顔をしている。
『あ、ありがとうございます!でも、これって煉獄様のお母様のものなんですよね?』
「あぁ、しばらく使っていなかったからどうかと思ったが、良いものがあってよかった!」
『しばらく使っていなかった…』
愛は杏寿郎の母が亡くなっているのは知っていたが、迂闊には話せない。

知っているはずがないのに、うっかり口を滑らせてしまうと不信感をもたれかねない。
慎重に言葉を選ばないと
煉獄様には嫌われたくない。

「あぁ、母上はもう亡くなっていてな…」
杏寿郎はそう話し出す。
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