第15章 無限列車の後
「俺は無限列車で愛が出てくる夢を見た」
あの日の話だ。
「あれは幸せな夢を見せてくれるらしいな」
ぽつぽつと言い聞かせるように優しく話す。
「初めは父上や千寿郎が出てきていたのだがな、切り替わって君が出てきたんだ。」
愛がハッと顔を上げた。
「しかも、白無垢姿だった。俺はその美しさに見惚れていた」
杏寿郎があまりにも幸せそうに笑うものだから、愛はその表情に魅入っていた。
「顔を覗いて見ようと思ったとき、ぷつりと夢から覚めてしまった」
杏寿郎はゆっくり目を閉じて、またゆっくりと目を開けた。
「夢の中の愛は話さなかったし、顔も見えなかった。しかし、俺は愛だと確信していた。おかしな話だな」
「愛はそれほどまでに俺の中に入り込んでいるようだ。
どうだろう…俺に白無垢姿を見せてもらえないだろうか?」
それはどれ程までに待ち望んだ告白であったか。
ダメだダメだと思いつつ、いつかは
そんな淡い夢を抱いていた。
しかし、目の前のことは夢ではない。
そう、夢ではないのだ。
愛はこみ上げてくるものを抑え、とびきりの笑顔で答えた。
『はい!』
愛が大きな声でそう言ったあと、杏寿郎の唇からが愛の唇に触れた。
「…やっと、言えた」
杏寿郎は耳元でそう優しく囁いた。
『わたしも…杏寿郎様が大好きです』
そして、また二人は口づけを交わした。