第10章 初任務 那田蜘蛛山
ここは、ここは…
知っている。
わたしはそう知っている。
鎹烏が急かすわけだわ。
かなりの緊急を要する任務。
那田蜘蛛山!
この禍々しい雰囲気。
間違いない。
でもさ、わたしみたいな初任務です!みたいなのに、ここを行かせていいの?
わたしは知ってるのよ!
ここは柱の処理案件だって!!
…はぁ、でも行くしかない
愛は先のことを知っているため、思わず本音が漏れてしまう。
今まで原作に絡んでこなかったのに、ここで絡ませてくるとか!
かなりやっかいなんだけども!!
『いや…知っているからこそ、できることがある』
そうつぶやくと愛の行動は早かった。
山に向かって少し走った。
薄暗い中でもわかる、人が倒れている。
『…!大丈夫ですか?』
隊服を着ている。
鬼殺隊のようだ。
「…ぅ、…助け…からだが…おかし…」
そう言ったボロボロの隊士はそこで事切れた。
『…ひどい』
愛は悔しさに顔を歪める。
切り傷がたくさん…。
仲間同士で斬り合わされたんだ。
これでここが那田蜘蛛山だって確信が持てた。
「ねぇ、蟲柱様に伝えてくれる?急いでください、毒を使う鬼がいますって」
肩に止まっていた鎹烏にそう伝えるとうっすらうなづいて飛び立った。
わたしがしてることは無意味かもしれないけれど、最善を尽くしたい。
少しでも多くの仲間が助かるといい。
少しでも多くの人の怪我が浅いといい。
わたしは結末を知っているから、わたしがいなくても何とかなるって知ってるけれど、目の前の人を助けたい。
でも…大きく変える事実は一つだけでいい。
そうただ一つ。
他は邪魔しちゃダメ。
まあ、でも目の前にいたら助けちゃうけどね。
長い考え事が終わった。
山の方へ目を向け、走り出した。