第8章 告白
『…はっ…はぁ…っ』
家まで果てしなく遠い。
何もかもが重い。
体中が痛い。
腕も足も全部の筋肉が悲鳴をあげている。
『きょ、杏寿郎様ぁ…待っていて、くださいね』
早く杏寿郎に会いたい。
家に帰りたい。
その思いだけが体を一歩また一歩を踏み出す原動力だ。
やっとの思いで屋敷へと辿り着いた。
もう夕暮れである。
『愛…ただいま…も、どりました』
玄関の土間に今度こそ倒れ込む。
奥からダッダッと大きな走る音が聞こえた。
「愛!!よく帰った!」
そう言って愛を優しく、抱き上げる。
そして、強く抱きしめた。
あぁ、大好きな杏寿郎様の声と匂いだ
帰ってこられた
「愛!よく頑張ったな!」
愛はもう目は見えていないが、杏寿郎がうっすらと泣いているように思った。
『はぃ…ただいまで、す』
そう言うと愛は完全に目蓋を閉じ、意識を手放した。